マレーシア移住 仕事
マレーシア移住と仕事|2026年6月のEP新基準と現地採用のリアル
最終更新日:2026-08-06
マレーシアで働きながら住むための条件は、2026年6月に大きく変わりました。就労ビザ(Employment Pass)の給与基準が全カテゴリーで引き上げられ、カテゴリーIは月給RM20,000以上になっています。一方で、ジェトロの調査では現地の日系企業の黒字割合はASEAN主要国で最も低い水準です。この記事では、制度の要件と現地の雇用環境の両方を数字で確認し、そのうえで給与水準と住居費がどう噛み合うのかを整理します。
就労ビザの給与基準は2026年6月に引き上げられた
マレーシアで雇用されて働く場合の一般的な在留資格が、就労ビザ(Employment Pass、EP)です。2025年10月に閣議承認された新しい給与基準が、2026年6月1日以降の申請(新規・更新の双方)に適用されています。
新基準では、カテゴリーIが月給RM20,000以上で在留期間は最長10年、カテゴリーIIが月給RM10,000〜19,999で最長10年、カテゴリーIIIが月給RM5,000〜9,999で最長5年です。改定前はカテゴリーIがRM10,000以上、IIがRM5,000〜9,999、IIIがRM3,000〜4,999でしたから、いずれの区分も基準が引き上げられています。判定の基礎になるのは基本給です。
カテゴリーIIIは廃止されず存続し、新たに家族の帯同が認められるようになりました。一方で、在留期間に上限が設けられた点は長期的な生活設計に影響します。EPは雇用主が申請するもので、個人が単独で取得することはできません。転職時は新しい雇用主による申請が必要です。
- カテゴリーI:月給RM20,000以上/最長10年
- カテゴリーII:月給RM10,000〜19,999/最長10年
- カテゴリーIII:月給RM5,000〜9,999/最長5年(家族帯同が可能に)
- 判定の基礎は基本給。適用は2026年6月1日以降の申請から
- 申請するのは雇用主。個人での取得はできない
就労以外の在留の選択肢
雇用によらずにマレーシアに住む選択肢もあります。デジタルノマド向けの「DE Rantau」は、IT・テック職で年収USD24,000超、それ以外の職種で年収USD60,000超(いずれもマレーシア国外を源泉とする所得)が要件です。期間は初回3〜12か月で、最長12か月の更新が可能。申請料は本人RM1,000、扶養家族が1人あたりRM500です。
富裕層向けのPVIP(Premium Visa Programme)は、月収RM40,000以上、定期預金RM100万、参加費RM20万といった要件で、最長20年、最低滞在日数の定めがありません。
MM2Hは長期滞在のプログラムですが、就労と事業運営が認められるのはプラチナ階層のみです。シルバー・ゴールド・SEZでは働けません。「MM2Hを取って現地で仕事を探す」という進め方は、階層を誤ると成立しないため注意してください。
現地法人を設立して自分をEPで雇用する方法もありますが、法人設立自体は在留資格を生みません。外資比率によって払込資本の水準が問われるほか、外国人・外国法人の持分が20%を超えると中小企業向けの優遇税率を失う点も含めて、法人設立の記事で整理しています。
日系企業の景況:黒字割合はASEAN主要国で最も低い
ジェトロが2025年8〜9月に実施し、2026年1月に公表した「2025年度 海外進出日系企業実態調査」では、マレーシアの回答企業の2025年の営業利益黒字見込みは62.5%でした。これはASEAN主要国で最も低い水準で、直近10年で見てもコロナ禍の2020年・2021年に次ぐ低さです。黒字割合は非製造業が微減にとどまった一方、製造業が前年比16.1ポイント減と大きく低下しました。
今後1〜2年で事業拡大を検討する企業の割合は44.0%と2年連続で低下し、「現状維持」の50.3%を下回っています。非製造業では拡大が51.8%と過半を占める一方、製造業では現状維持が54.3%です。
雇用側の状況も確認しておく価値があります。直近2年間の人材確保が「悪化」した企業は44.9%で、ASEANではベトナムに次ぐ高さ。悪化の理由は職種を問わず「賃金・待遇面などの要求水準の高まり」が最多でした。投資環境上のリスクとしても「人件費の高騰」が66.5%で最多です。2026年のベースアップ率はマレーシアで4.4%が見込まれています。
この数字が意味するのは、現地の人件費は上昇しているが、企業の収益環境は楽ではないということです。日本人の採用枠が広がりやすい局面ではありません。
- 2025年の営業利益黒字見込み:62.5%(ASEAN主要国で最低)
- 事業拡大を検討:44.0%(2年連続低下)/現状維持:50.3%
- 人材確保が「悪化」した企業:44.9%
- 投資環境上のリスク1位:人件費の高騰(66.5%)
- ベースアップ率:4.4%見込み
給与と住居費のギャップを先に計算する
ここが移住の可否を決める実務的な論点です。EPカテゴリーIIIの下限は月給RM5,000。一方、クアラルンプールの家賃は、モントキアラの1ベッドルームでRM2,500〜5,500、2ベッドルームでRM4,000〜8,000が目安です。KLCCの1ベッドルームはRM2,700〜7,500。
月給RM5,000で家賃RM2,500の物件を借りると、住居費が手取りの5割前後を占めます。加えてマレーシアは車社会で、多くの住宅エリアで自家用車が前提になります。しかもガソリンの政府補助は国民限定で、外国人が支払うのは市場価格です。医療も公的保険の対象外となるため、民間保険の保険料が固定費として乗ります。
賃貸契約の初期費用は、保証金2か月分、公共料金デポジット0.5か月分、前家賃1か月分の合計約3.5か月分です。渡航直後にこの金額を用意する必要があります。
結論として、カテゴリーIIIの下限付近の給与で日本と同等の生活水準を維持するのは容易ではありません。オファーを検討する段階で、家賃・車・保険・(子どもがいれば)学費を合算した支出表を作り、手取りと突き合わせてください。エリア別の家賃水準は家賃相場の記事にまとめています。
税務:182日で居住者、海外所得の免除は2036年まで
マレーシアの所得税法1967年第7条により、暦年で182日以上マレーシアに物理的に滞在すると税務上の居住者と判定されます。非居住者(182日未満)と判定された場合、マレーシア源泉の課税所得には一律30%の税率が適用され、人的控除は使えません。着任時期によっては初年度が非居住者扱いになることがあるため、入国日は確認しておく価値があります。
海外源泉所得(FSI)については、居住者個人への免除措置が2024年12月に官報告示されたP.U.(A) 451/2024によって延長され、2036年12月31日まで有効です。適用には、その所得が源泉国ですでに課税されていることが条件となります。
日本側の納税義務は日本の税法で別途判断されます。住民票や日本の不動産の扱いを含め、出国前に日本の税理士に確認してください。
家族帯同と配偶者の就労
2026年6月の改定で、カテゴリーIIIでも家族の帯同が認められるようになりました。配偶者と子は扶養者パス(Dependant Pass)で帯同します。
扶養者パスの保有者がマレーシアで働く場合は、そのままでは就労できず、雇用主を通じた就労許可の裏書きが必要になります。配偶者も働く前提で家計を組む場合は、この手続きの可否を渡航前に確認してください。
子どもの就学については、インターナショナルスクールの学費が最大の固定費になります。クアラルンプール周辺で年間RM12,000〜145,000と幅があり、2025年9月以降、年間学費がRM60,000を超える部分には6%のサービス税が課されます。教育を主目的とする移住は、ビザの取り方から住まいの選び方まで前提が変わるため、教育移住の記事で個別に整理しています。
仕事が決まったあとの住まいの決め方
勤務地が決まってから住まいを選ぶ順序を崩さないでください。クアラルンプール首都圏は渋滞が激しく、直線距離で近くても通勤時間が読めないエリアがあります。
確認すべきは、通勤経路の道路状況(時間帯別)、駐車場の有無と費用、雨天時の移動手段、そして生活導線(スーパー、医療機関、学校)です。マレーシアの多くのエリアでは徒歩移動が現実的ではなく、車の維持費が家計に乗ります。
着任直後は賃貸から始めるのが無難です。購入を検討するのは、生活導線が固まり、在留期間の見通しが立ってからで遅くありません。エリアごとの特徴は各エリアページで比較できます。
出典
マレーシア不動産の購入前に、条件を整理しませんか?
予算、購入目的、希望エリア、移住予定の有無によって、見るべき物件や確認すべきリスクは変わります。まずは無料相談で、あなたの条件に合う選択肢を整理できます。
よくある質問
マレーシアの就労ビザの給与基準はいくらですか?
2026年6月1日以降の申請では、カテゴリーIが月給RM20,000以上(最長10年)、カテゴリーIIがRM10,000〜19,999(最長10年)、カテゴリーIIIがRM5,000〜9,999(最長5年)です。判定の基礎は基本給で、改定前はそれぞれRM10,000以上、RM5,000〜9,999、RM3,000〜4,999でした。
自分で就労ビザを申請できますか?
できません。EPは雇用主が申請するもので、個人が単独で取得することはできません。転職する場合も、新しい雇用主による申請が必要です。
仕事を探しながらマレーシアに住めますか?
MM2Hで就労が認められるのはプラチナ階層のみで、シルバー・ゴールド・SEZでは働けません。国外の所得で生活するデジタルノマドであればDE Rantau(テック職は年収USD24,000超、それ以外はUSD60,000超)という選択肢があります。
現地採用の給与で生活できますか?
水準によります。EPカテゴリーIIIの下限はRM5,000ですが、モントキアラの1ベッドルームの家賃はRM2,500〜5,500が目安で、住居費が手取りの5割前後を占める計算になります。さらに車の維持費、民間医療保険、賃貸の初期費用(家賃約3.5か月分)が必要です。オファー検討の段階で支出表を作ることをおすすめします。
日系企業の求人環境はどうですか?
ジェトロの2025年度調査では、マレーシアの日系企業の営業利益黒字見込みは62.5%とASEAN主要国で最低でした。事業拡大を検討する企業は44.0%と2年連続で低下し、現状維持が50.3%です。一方で人材確保が「悪化」した企業は44.9%あり、人件費高騰が投資リスクの1位に挙がっています。
配偶者もマレーシアで働けますか?
扶養者パス(Dependant Pass)のままでは就労できません。雇用主を通じた就労許可の裏書きが必要です。共働き前提で家計を組む場合は、渡航前に手続きの可否を確認してください。
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