マレーシア移住
マレーシア移住ガイド|MM2Hの最新要件・ビザ・税金・住まいの実際
最終更新日:2026-08-06
マレーシアに住むための制度は、この数年で大きく変わりました。MM2Hは2024年7月にシルバー・ゴールド・プラチナの3階層となり、その後ジョホールの経済特区を対象とするSEZ階層が加わって、2026年時点では4区分で運用されています。定期預金の額はUSD建てです(日本語の情報にはリンギット建ての誤った数値が多く出回っています)。就労ビザの給与基準も2026年6月から引き上げられました。この記事では、政府の一次資料にもとづいて現行の要件を整理します。
マレーシアの在留邦人は19,690人、実は減っている
外務省の「海外在留邦人数調査統計」(令和7年版、2025年10月1日現在)によると、マレーシアの在留邦人数は19,690人でした。国別では世界14位です。内訳は長期滞在者が17,923人(91.0%)、永住者が1,767人(9.0%)となっています。
注目すべきは推移です。2020年の30,973人をピークに、2023年20,657人、2024年20,025人、2025年19,690人と減少が続いています。前年比では1.7%減。「日本人の移住先として人気が高まっている」という語られ方をよく見かけますが、統計上の在留邦人数はむしろ縮小しています。
この事実は不動産の判断にも関わります。日本人向けの賃貸需要を前提にした投資を考えている場合、母集団そのものが増えていないことを織り込む必要があります。
- 在留邦人 19,690人(2025年10月1日現在・世界14位)
- 長期滞在者 17,923人(91.0%)/永住者 1,767人(9.0%)
- 前年比 −1.7%、2020年のピーク30,973人から約36%減
MM2Hの現行要件:定期預金はUSD建て、2026年時点で4階層
MM2H(Malaysia My Second Home)は、2024年6月に発表・実施された3階層制(シルバー・ゴールド・プラチナ)を土台に、その後ジョホール州の経済特区を対象とするSEZ階層が加わり、2026年時点では4区分で案内されています。所管は観光芸術文化省(MOTAC)です。
最も重要な注意点から述べます。定期預金の額はUSD建てで設定されています。日本語のウェブ記事には「シルバーはRM50万」といったリンギット建ての数値が散見されますが、これは誤りです。多くはサラワク州の別制度(後述するS-MM2H、定期預金RM50万)との混同によるものと考えられます。
シルバーは定期預金USD15万、物件購入義務RM60万以上、ビザ有効期間5年、参加費RM1,000。ゴールドは定期預金USD50万、物件購入義務RM100万以上、ビザ15年、参加費RM3,000。プラチナは定期預金USD100万、物件購入義務RM200万以上、ビザ20年、参加費RM20万です。SEZ階層は21〜49歳がUSD65,000、50歳以上がUSD32,000、物件購入義務RM50万以上(指定エリアの物件)、ビザ10年、参加費RM1,000とされています。
共通する条件として、申請者は25歳以上(SEZは21歳以上)、海外所得の証明要件は撤廃されています。年間の最低滞在日数(半島マレーシアで累計90日)が課されるのはおおむね25〜49歳で、50歳以上には最低滞在日数の定めが置かれていません。定期預金は承認後、物件購入・教育・医療・観光の目的に限り最大50%まで引き出せます。申請はMOTAC認可のエージェントを通す必要があり、個人での直接申請はできません。就労や事業の運営が認められるのはプラチナのみです。階層ごとの詳細はMM2Hの解説記事にまとめています。
- SEZ:定期預金USD32,000(50歳以上)/USD65,000(21〜49歳)/物件RM50万以上/ビザ10年
- シルバー:定期預金USD15万/物件RM60万以上/ビザ5年/参加費RM1,000
- ゴールド:定期預金USD50万/物件RM100万以上/ビザ15年/参加費RM3,000
- プラチナ:定期預金USD100万/物件RM200万以上/ビザ20年/参加費RM20万・就労可
- 最低滞在90日は25〜49歳が対象。50歳以上は定めなし。認可エージェント経由必須
MM2Hを取っても、物件の最低購入価格は安くならない
誤解が多い点です。MM2Hの階層ごとに定められた物件購入義務(シルバーRM60万など)と、各州が定める外国人の最低購入価格は、別々の規制です。MM2Hは連邦の制度であり、州の土地・不動産規制を上書きしません。両方が適用され、高いほうが実際の下限になります。
具体例で考えます。シルバーでクアラルンプールに住宅を買う場合、MM2H側の義務はRM60万以上ですが、クアラルンプールの外国人最低購入価格はRM100万です。したがって実際にはRM100万以上の物件しか購入できません。「MM2Hを取ればRM60万の物件が買える」わけではないのです。
さらに2026年1月1日以降、非永住権の外国人が住宅を取得する際の印紙税は一律8%になりました(改定前は4%)。MM2H保有者もマレーシア永住権を持たない限りこの対象です。MM2Hは長期滞在の資格であって、永住権(PR)ではありません。州別の最低購入価格と税負担の詳細は価格相場のページにまとめています。
サラワク州のS-MM2Hは別制度:条件は緩いが居住地は限定
サラワク州は連邦のMM2Hとは独立した「S-MM2H」を運用しています。州政府の管轄で、要件が異なります。
2025年1月1日施行の改定により、定期預金はRM15万からRM50万へ引き上げられました。主申請者は30歳以上(配偶者に年齢制限なし)、年間の最低滞在日数は累計30日と連邦版の90日より緩く、ビザは5年のソーシャル・ビジット・パスで5年の更新が可能(最長10年)。申請料はRM5,000(返金不可)です。物件購入は義務ではありません。
連邦版のシルバー(定期預金USD15万)と比べると、金銭的なハードルは低く、滞在義務も軽いのが特徴です。ただしS-MM2Hによる居住資格は法的にはサラワク州内に限られます。クアラルンプールやペナンに住む目的では選択できません。
働いて住むなら:2026年6月から就労ビザの給与基準が上がった
就労を通じてマレーシアに住む場合、一般的なのが就労ビザ(Employment Pass)です。2025年10月に閣議承認された新しい給与基準が、2026年6月1日から施行されています。
新基準では、カテゴリーIが月給RM20,000以上で在留期間は最長10年、カテゴリーIIが月給RM10,000〜19,999で最長10年、カテゴリーIIIが月給RM5,000〜9,999で最長5年です。改定前はカテゴリーIがRM10,000以上、カテゴリーIIがRM5,000〜9,999、カテゴリーIIIがRM3,000〜4,999でしたから、いずれの区分も基準が引き上げられています。カテゴリーIIIは廃止されず存続し、新たに家族の帯同が認められるようになりました。
このほかの選択肢として、デジタルノマド向けの「DE Rantau」があります。IT・テック職は年収USD24,000超、それ以外の職種は年収USD60,000超(いずれもマレーシア国外を源泉とする所得)が要件で、期間は初回3〜12か月、最長12か月の更新が可能です。申請料は本人RM1,000、扶養家族が1人あたりRM500です。
富裕層向けにはPVIP(Premium Visa Programme)があり、月収RM40,000(年RM48万)以上、定期預金RM100万、参加費RM20万といった要件で、最長20年、最低滞在日数の定めがありません。
- 就労ビザ Cat I:月給RM20,000以上/最長10年
- 就労ビザ Cat II:月給RM10,000〜19,999/最長10年
- 就労ビザ Cat III:月給RM5,000〜9,999/最長5年(家族帯同可に)
- DE Rantau:テック職 年収USD24,000超/非テック職 年収USD60,000超
- PVIP:月収RM40,000以上・定期預金RM100万・参加費RM20万/最長20年
税務:滞在182日で居住者、海外所得の免除は2036年まで
マレーシアの所得税法1967年第7条により、暦年で182日以上マレーシアに物理的に滞在すると税務上の居住者と判定されます。連結期間や90日ルールなど、代替の判定基準も存在します。
重要なのは、MM2Hが課す年間90日の滞在義務は、税務上の居住者資格を自動的に生じさせるものではないという点です。ビザ制度の滞在義務と税法上の日数判定は、まったく別の基準で動いています。
非居住者(182日未満)と判定された場合、マレーシア源泉の課税所得には一律30%の税率が適用され、人的控除は使えません。
海外源泉所得(FSI)については、2022年1月1日から課税対象となったものの、居住者個人には免除措置が置かれています。当初は2026年までの措置でしたが、2024年12月24日に官報告示されたP.U.(A) 451/2024により10年延長され、免除は2036年12月31日まで有効です。適用には、その所得が源泉国ですでに課税されていることが条件となります。
医療と教育:外国人にかかる実際のコスト
公立病院は外国人も利用できますが、補助のない全額料金が適用され、市民の負担額の数倍になります。保健省が外国人向けの料金表を公表しています。加えて2025年7月1日から、非市民が受ける民間医療サービスには6%のサービス税が課されるようになりました(市民および障害者は免除)。外国人居住者にとって、民間の医療保険への加入は事実上の前提です。
クアラルンプールとペナンにはJCI認証を受けた病院が複数あり(グレンイーグルスKL、プリンス・コート、パンタイKL、サンウェイなど)、医療ツーリズムの拠点にもなっています。医療水準そのものへの評価は高い一方、費用は保険でカバーする設計にしておく必要があります。
教育では、インターナショナルスクールの学費が最大の固定費になります。2026〜27年度の年間学費は、ISKLがRM70,200〜143,400、アリス・スミス・スクールがRM53,730〜122,370、モントキアラ・インターナショナルがRM35,110〜132,940です。日本のカリキュラムを希望する場合は、セランゴール州サウジャナにあるクアラルンプール日本人学校(1966年設立)という選択肢があります。
なお2025年から、年間学費がRM60,000を超える部分には6%のサービス税が課されています。
住まいは、まず借りてから考える
MM2Hのゴールド以上は物件購入が義務ですが、シルバーであっても、そしてどのビザであっても、最初から購入する必要はありません。生活導線は実際に住んでみないと分かりません。通勤・通学の経路、渋滞の実際、買い物のしやすさ、夜間の雰囲気は、内見や短期滞在では把握しきれない部分が残ります。
マレーシアの賃貸契約では、保証金2か月分、公共料金デポジット0.5か月分、前家賃1か月分を合わせた約3.5か月分が初期費用の目安です。日本のような礼金はありません。外国人向けの価格帯では家具付きが標準のため、家具の購入や処分に費やす費用と手間もかかりません。エリア別の家賃水準は家賃相場の記事で確認できます。
購入を検討する段階になったら、外国人の最低購入価格、州政府の購入許可、2026年から一律8%となった印紙税、そして売却時の流動性を確認してください。これらは価格相場と購入規制のページで整理しています。
出典
マレーシア不動産の購入前に、条件を整理しませんか?
予算、購入目的、希望エリア、移住予定の有無によって、見るべき物件や確認すべきリスクは変わります。まずは無料相談で、あなたの条件に合う選択肢を整理できます。
よくある質問
MM2Hの最新の要件を教えてください。
2026年時点ではSEZ・シルバー・ゴールド・プラチナの4階層です。シルバーは定期預金USD15万・物件RM60万以上・ビザ5年、ゴールドはUSD50万・RM100万以上・15年、プラチナはUSD100万・RM200万以上・20年、SEZは21〜49歳がUSD65,000/50歳以上がUSD32,000・物件RM50万以上(指定エリア)・10年です。定期預金がUSD建てである点と、最低滞在90日が課されるのは25〜49歳である点に注意してください。
MM2Hを取ると物件を安く買えますか?
安くなりません。MM2Hの物件購入義務と、州が定める外国人の最低購入価格は別の規制で、高いほうが適用されます。シルバー(義務RM60万)でもクアラルンプールで買うなら州の下限RM100万を満たす必要があります。また2026年からは非永住権の外国人に一律8%の印紙税がかかり、MM2H保有者も対象です。
サラワクのS-MM2Hは連邦のMM2Hと何が違いますか?
別制度です。定期預金はRM50万(2025年1月1日にRM15万から引き上げ)、主申請者は30歳以上、年間最低滞在は30日、ビザは5年+5年更新、申請料RM5,000で、物件購入は任意です。条件は緩いものの、居住資格は法的にサラワク州内に限られます。
就労ビザの給与基準はいくらですか?
2026年6月1日施行の新基準では、カテゴリーIが月給RM20,000以上(最長10年)、カテゴリーIIがRM10,000〜19,999(最長10年)、カテゴリーIIIがRM5,000〜9,999(最長5年)です。改定前はそれぞれRM10,000以上、RM5,000〜9,999、RM3,000〜4,999でした。
マレーシアに住むと日本の所得に課税されますか?
マレーシアでは暦年182日以上の滞在で税務上の居住者と判定されます。海外源泉所得については居住者個人への免除措置があり、P.U.(A) 451/2024により2036年12月31日まで延長されました。適用にはその所得が源泉国で課税済みであることが条件です。日本側の納税義務については日本の税理士に確認してください。
マレーシアの在留邦人は増えていますか?
減っています。2025年10月1日現在で19,690人、前年比1.7%減です。2020年の30,973人をピークに減少が続いています。日本人向けの賃貸需要を前提に投資を検討する場合は、この点を織り込む必要があります。
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