マレーシア治安
マレーシアの治安は悪い?犯罪統計とKLの実情、住まいで防ぐ方法
最終更新日:2026-07-10
マレーシアの治安は「良い」とも「悪い」とも言い切れません。外務省はマレーシアの大部分に危険情報を出していない一方、統計局のデータではクアラルンプールの犯罪率は全国で最も高くなっています。この記事では公的統計をもとに、何が増えていて何が減っているのか、日本人が実際に遭う被害は何か、そして住まい選びで防げる部分はどこかを整理します。
外務省の危険情報:大部分の地域に危険情報は出ていない
日本の外務省海外安全ホームページでは、クアラルンプール、ペナン、マラッカ、ランカウイを含むマレーシアの大部分について、危険情報は発出されていません。危険レベルが設定されているのはサバ州東部の一部地域に限られ、島嶼部の一部にレベル2(不要不急の渡航は止めてください)、クダットからタワウにかけての沿岸部にレベル1(十分注意してください)が出ています。マレーシア国内にレベル4(退避勧告)が出ている地域はありません。
サバ州東部に危険レベルが設定されている理由は、フィリピン南部を拠点とする武装勢力による身代金目的の誘拐が過去に発生したためです。近年は事案が確認されておらず、危険レベルは段階的に引き下げられてきました。
危険情報は情勢に応じて随時変更されます。渡航や移住の前には、必ず外務省海外安全ホームページで最新のレベルと対象地域を直接確認してください。本記事の記述は執筆時点のものです。
犯罪統計:財産犯は増え、凶悪犯は減っている
マレーシア統計局(DOSM)が2025年10月に公表した犯罪統計によると、2024年の指標犯罪は58,255件で、前年の52,444件から11.1%増加しました。増加分の中心は財産犯です。
内訳を見ると、傾向がはっきり分かれます。財産犯は47,188件で前年比12.4%増、暴行を伴う犯罪は11,067件で5.9%増、強姦は1,899件で12.1%増。一方、殺人は237件で9.5%減、強盗は4,276件で6.8%減となりました。つまり、増えているのは窃盗などの財産犯であり、生命に関わる凶悪犯罪はむしろ減少しています。
日本人が居住者として直面する可能性が高いのは、この増加している側の財産犯です。「殺人が減っているから安全」という読み方も、「犯罪が11%増えたから危険」という読み方も、どちらも粗すぎます。
- 指標犯罪 58,255件(2024年・前年比+11.1%)
- 財産犯 47,188件(+12.4%)=増加の主因
- 暴行 11,067件(+5.9%)
- 殺人 237件(−9.5%)
- 強盗 4,276件(−6.8%)
クアラルンプールの犯罪率は全国で最も高い
同じDOSMの統計を人口10万人あたりの犯罪率で州別に見ると、クアラルンプール連邦直轄領が221で全国最高です。以下、セランゴール州196、ケダ州とペナン州がそれぞれ193と続き、最も低いのはサバ州の95でした。
つまり、日本人が住居を検討することの多いクアラルンプールは、マレーシア国内で相対的に犯罪発生率が高い地域にあたります。これは都市部に人口・商業・移動が集中する以上、ある程度は避けがたい傾向でもあります。重要なのは、この事実を踏まえたうえで、市内のどこに住み、どう移動するかを具体的に決めることです。
在マレーシア日本国大使館は、ブキッ・ビンタン周辺やKLセントラル駅周辺での street crime(ひったくり、スリ)について繰り返し注意喚起しています。また、主要都市での住居侵入盗により邦人が被害に遭う事例も少なくないとしています。
- クアラルンプール:221(人口10万人あたり・全国最高)
- セランゴール:196
- ケダ/ペナン:193
- サバ:95(全国最低)
日本人が実際に遭いやすいのは詐欺
在マレーシア日本国大使館は、詐欺被害への注意喚起を繰り返し発出しています。マレーシア国内の詐欺認知件数は近年増加傾向にあり、2024年は過去最多の水準に達したとされます。手口の内訳としては、警察官や銀行員を装う電話・なりすまし詐欺、電子商取引をめぐる詐欺、投資詐欺が上位を占めます。
特に知られているのが「マカオ・スキャム(Macau Scam)」と呼ばれる手口です。警察・政府機関・銀行の職員を名乗る人物が電話をかけ、「あなたの口座がマネーロンダリングに使われている」「捜査対象になっている」などと告げて動揺させ、指定口座への送金を迫ります。マレーシア国家警察(PDRM)やマレーシア中央銀行(BNM)が専用の注意喚起ページを設けているほど一般化した犯罪です。高齢者や富裕層が狙われやすい傾向があります。
公的機関が電話で送金を求めることはありません。不審な電話を受けた場合はその場で応じず、いったん切って、公式に公表されている番号にかけ直して確認してください。
- 警察・銀行を装う電話詐欺(マカオ・スキャム)
- 電子商取引をめぐる詐欺
- 投資詐欺
- ブキッ・ビンタン、KLセントラル周辺でのひったくり・スリ
- 主要都市での住居侵入盗
見落とされがちな最大の日常リスクは交通事故
犯罪よりも統計的に遭遇確率が高いのが交通事故です。マレーシア運輸省が明らかにした数字では、2024年1月から10月までの10か月間に発生した交通事故は532,125件、うち死亡事故は5,364件にのぼりました。そして死亡事故の68%にオートバイが関与しています。
WHOの推計によれば、マレーシアの交通事故死亡率は人口10万人あたり13.9人(2021年)です。オートバイはマレーシアの登録車両のおよそ47%を占める一方、二輪車の安全基準を満たす道路整備は限定的で、これが死亡事故率を押し上げる構造的要因になっています。
住まいを選ぶ際、通勤や通学の経路が幹線道路を横断するか、歩道が連続しているか、雨天時に歩けるかといった点は、犯罪リスクと同等かそれ以上に生活の安全を左右します。マレーシアは車社会であり、多くのエリアで徒歩移動は現実的ではありません。
住まいで防げる部分は大きい:内見時のチェック項目
マレーシアの中〜高価格帯のコンドミニアムでは、「Gated & Guarded(G&G)」と呼ばれる、外周をフェンスで囲みゲートで入退場を管理する形式が事実上の標準です。24時間体制の警備員配置、警備員による巡回、CCTVによる監視、アクセスカードによる入館・エレベーター制御、来訪者の登録制度などが一般的に備わっています。
ただし、これらは法律で義務づけられた最低基準ではなく、あくまで市場の慣行です。同じ「警備あり」でも運用の質には大きな差があります。内見時には、警備員が実際に来訪者を確認しているか、エレベーターがアクセスカードなしで任意の階に止まらないか、駐車場の照明と死角、非常口の施錠状態、共用部の管理状態を自分の目で確認してください。共用部の清掃や設備の維持が行き届いていない建物は、警備の運用も緩い傾向があります。
前述のとおり、日本人が遭いやすい被害は住居侵入盗と street crime、そして詐欺です。このうち住居侵入盗は建物のセキュリティ運用で、street crime は移動手段(配車アプリの利用、夜間の徒歩移動を避ける)で、相当程度まで低減できます。エリアごとの特徴は各エリアページで確認できます。
- 警備員が来訪者を実際に確認しているか
- エレベーターのアクセスカード制御が機能しているか
- 駐車場の照明と死角、非常口の施錠状態
- 共用部の清掃・設備の維持状態(警備運用の質と相関する)
- 夜間の帰宅導線と、徒歩移動が必要かどうか
出典
マレーシア不動産の購入前に、条件を整理しませんか?
予算、購入目的、希望エリア、移住予定の有無によって、見るべき物件や確認すべきリスクは変わります。まずは無料相談で、あなたの条件に合う選択肢を整理できます。
よくある質問
マレーシアに外務省の危険情報は出ていますか?
クアラルンプールやペナンを含む大部分の地域には危険情報は出ていません。サバ州東部の一部島嶼部にレベル2、クダットからタワウにかけての沿岸部にレベル1が設定されています。レベル4(退避勧告)の地域はありません。渡航前に外務省海外安全ホームページで最新情報を確認してください。
マレーシアの犯罪は増えていますか?
2024年の指標犯罪は58,255件で前年比11.1%増でした。ただし増加の主因は財産犯(+12.4%)であり、殺人は9.5%減、強盗は6.8%減と、凶悪犯罪はむしろ減少しています。
クアラルンプールの治安は他州と比べてどうですか?
人口10万人あたりの犯罪率で見ると、クアラルンプールは221と全国で最も高くなっています。最も低いサバ州は95です。都市部への人口と商業の集中を反映した数字です。
日本人が最も遭いやすい被害は何ですか?
詐欺です。特に警察官や銀行員を装って送金を迫る「マカオ・スキャム」への注意喚起が繰り返し出されています。次いでブキッ・ビンタンやKLセントラル周辺でのひったくり・スリ、住居侵入盗が挙げられます。
犯罪より注意すべきリスクはありますか?
交通事故です。2024年1〜10月の10か月間で死亡事故が5,364件発生し、その68%にオートバイが関与しています。マレーシアは車社会で徒歩移動が現実的でないエリアも多く、住まいの選定時に通勤・通学経路の安全性を確認する必要があります。
免責事項
本サイトの情報は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の物件購入、投資判断、税務、法務、金融商品を推奨するものではありません。実際の購入判断にあたっては、現地の専門家、不動産会社、弁護士、税理士等に確認してください。