マレーシア不動産ナビ編集部 Malaysia Property Advisory

マレーシア移住 悲惨

マレーシア移住は「悲惨」なのか|公的データで7つの論点を検証

最終更新日:2026-08-06

「マレーシア移住は悲惨」「後悔した」という言葉は、体験談としては流通していても、根拠となる数字とセットで語られることはあまりありません。この記事では、在留邦人数、物価と制度改定、医療と教育の費用、雇用環境、不動産市況という7つの論点を、公的統計と一次資料で確認します。結論から言えば、悲惨になりやすい構造は確かに存在します。ただしその多くは、事前に数字で確認すれば回避できる種類のものです。

マレーシア移住の現実を、在留邦人数・生活費・医療・教育・仕事・制度改定・不動産の観点で検証するスマホ向け図解
「悲惨」と言われる論点を、公的データで一つずつ確認します。

論点1:在留邦人は増えていない。ピークから約36%減

外務省の「海外在留邦人数調査統計」(令和7年版、2025年10月1日現在)によると、マレーシアの在留邦人数は19,690人でした。内訳は長期滞在者が17,923人、永住者が1,767人です。

推移を見ると、2020年の30,973人をピークに、2023年20,657人、2024年20,025人、2025年19,690人と減少が続いています。前年比では1.7%減、ピークからは約36%減です。「日本人の移住先として人気が高まっている」という語り方をよく見かけますが、統計上の在留邦人数はむしろ縮小しています。

この事実は2つの意味を持ちます。ひとつは、日本人コミュニティを前提にした生活設計(日本語で通じる環境、日本人向けサービス)が、想定より縮小方向にあるということ。もうひとつは、日本人向けの賃貸需要を当て込んだ不動産投資が、母集団の縮小という逆風を受けるということです。

  • 在留邦人 19,690人(2025年10月1日現在)
  • 長期滞在者 17,923人/永住者 1,767人
  • 前年比 −1.7%、2020年のピーク30,973人から約36%減

論点2:物価は「安い」ではなく「項目で割れる」

外食と公共交通は明確に安い一方、自動車、酒・タバコ、教育は日本より高くなります。自動車には輸入関税が最大30%、物品税が60〜105%、売上税10%が課され、現地生産のペロドゥア・ミィヴィが46,500〜59,900リンギ、輸入車のホンダ・シティが84,900〜111,900リンギという価格帯です。

「悲惨」という評価につながりやすいのが、この構造を知らずに家計を組んだ場合です。Numbeoの2026年6月時点の比較では、家賃を含む生活費は東京がクアラルンプールより53.8%高い一方、食料品の差は34.8%にとどまり、家賃の差が101.1%と突出しています。つまり日本との生活費の差の大半は住居費が生んでおり、外食や食料品での節約幅は思うほど大きくありません。

さらに見落とされやすいのが、ガソリン補助が外国人に適用されないことです。RON95の補助価格1リットルRM1.99はMyKad(マレーシア国民の身分証)による本人確認が前提で、対象は国民に限られます。外国人が払うのは市場価格で、2026年7月第1週時点で1リットルRM3.37。車社会であることを踏まえると、燃料費は補助後価格ではなく市場価格で見積もる必要があります。

  • 自動車:輸入関税最大30%+物品税60〜105%+売上税10%
  • ガソリン補助(RM1.99)は国民限定。外国人は市場価格RM3.37
  • 東京との生活費の差は住居費が大半(家賃差101.1%に対し食料品34.8%)

論点3:医療は水準が高い一方、費用は全額自己負担の設計になる

クアラルンプールとペナンにはJCI認証を受けた病院が複数あり、医療ツーリズムの拠点にもなっています。医療水準そのものへの評価は高いのが実情です。

問題は費用の負担構造です。外国人居住者はマレーシアの公的医療保険の対象外で、公立病院を利用する場合も補助のない全額料金が適用されます。加えて2025年7月1日から、非市民が受ける民間医療サービスには6%のサービス税が課されるようになりました(市民および障害者は免除)。

一般開業医(GP)の診察料は2026年4月2日からRM10〜RM80の範囲に規制されていますが、これは一般開業医に限った規制です。私立病院の専門医は対象外で、初診はRM200〜400程度が一般的とされます。民間の医療保険への加入は事実上の前提であり、年齢が上がるほど保険料は上昇します。高齢での移住では、この保険料が家計の固定費として無視できない規模になります。

論点4:教育費は年RM145,000に達することがある

子ども連れの移住で最大の固定費がインターナショナルスクールの学費です。クアラルンプール周辺の年間学費はRM12,000からRM145,000と幅広く、中央値はおよそRM45,000。上位校では初等課程で年RM100,000〜140,000、中等・IBディプロマ課程では年RM120,000〜165,000以上に達します。

2025年9月1日以降、年間の学費がRM60,000を超える部分には6%のサービス税が課されています。制度変更によって、想定していた学費が後から上振れする例です。

この金額を複数の子どもについて負担し、さらに家賃、車、医療保険を払うと、日本での生活費を下回らないケースが出てきます。「生活費が安いから」という理由だけで移住を決めると、この段階で計算が合わなくなります。教育を主目的とする場合の費用構成は教育移住の記事で個別に整理しています。

論点5:働いて住むためのハードルは上がっている

就労ビザ(Employment Pass)の給与基準は、2026年6月1日以降の申請から引き上げられました。カテゴリーIが月給RM20,000以上、カテゴリーIIがRM10,000〜19,999、カテゴリーIIIがRM5,000〜9,999。改定前はそれぞれRM10,000以上、RM5,000〜9,999、RM3,000〜4,999でした。カテゴリーI・IIは最長10年、IIIは最長5年という在留期間の上限も設けられています。

受け入れ側の環境も確認しておく価値があります。ジェトロの「2025年度 海外進出日系企業実態調査」では、マレーシアの日系企業の2025年営業利益黒字見込みは62.5%で、ASEAN主要国のなかで最も低い水準でした。事業拡大を検討する企業は44.0%と2年連続で低下し、現状維持が50.3%です。

一方で人材確保が「悪化」した企業は44.9%あり、投資環境上のリスクとしては「人件費の高騰」が66.5%で最多でした。現地の賃金は上がっているが企業の収益環境は厳しい、という組み合わせです。日本人の採用枠が広がりやすい局面ではありません。

論点6:制度が動き続ける。「2年前に調べた条件」は使えない

これが移住後の生活で最も効いてくる要素かもしれません。ここ数年、生活と資産に直結する制度の改定が続いています。

MM2Hは2024年7月に3階層化され、その後ジョホールの経済特区を対象とするSEZ階層が加わりました。定期預金はUSD建てで、日本語記事にはリンギット建ての古い数値が残ったままです。外国人の不動産取得にかかる印紙税は2026年1月に4%から8%へ倍増しました。サービス税の課税範囲は拡大し、非市民の民間医療、年RM60,000超の学費、賃貸・リース役務などが新たに対象になっています。最低賃金は月RM1,500からRM1,700へ、電気料金体系も2025年7月に改定されました。

「悲惨」と語られる事例の一部は、この改定に追いつけないことから生じています。移住の判断に使った条件が、実際に住み始める頃には変わっているという構図です。制度に依存する部分(ビザの階層、税率、補助の対象)は、契約直前に一次資料で再確認するほかありません。

  • MM2H:2024年7月に3階層化、その後SEZ階層が追加
  • 外国人の印紙税:2026年1月に4%→8%
  • サービス税:非市民の民間医療、年RM60,000超の学費などに拡大
  • 最低賃金:RM1,500→RM1,700(管理費の上昇要因)

論点7:不動産は「買えば安心」ではない

移住とセットで物件を購入した結果、売るに売れなくなるというのが、最も金額の大きい失敗の形です。数字で確認します。

NAPICのデータを引用した各種のまとめによれば、2025年第3四半期のクアラルンプールの住宅価格指数は前年同期比で4.3%下落し、同地域の売れ残り完成在庫は3,643戸(金額でおよそRM31.6億)と全州で最多でした。集計サイトの推計では、クアラルンプール全体の空室率はおよそ9%、供給過剰の郊外高層物件では12〜18%とされています。

加えて、外国人がクアラルンプールで購入できるのはRM100万以上の物件です。クアラルンプールの世帯所得中央値は月RM10,805(年約RM12万9,660)ですから、この価格帯を買えるのは現地の富裕層か外国人に限られます。「現地の経済成長に伴って現地の人が買ってくれる」という出口は成立しにくいということです。

利回りについても、高級エリアほど表面利回りが低いという逆説があります。全国平均が表面5%台であるのに対し、KLCCやバンサーなどの高額エリアは4.5〜5.5%。実質利回りはここからさらに1〜2ポイント低下します。

「悲惨」を避けるための設計

以上を踏まえると、避けられるものと避けられないものが分かれます。在留邦人の減少、制度改定の頻度、車社会という前提は、個人の努力では変えられません。一方、費用の見積もり違いと不動産の出口の問題は、事前の設計で相当程度回避できます。

実務的な順序としては、まず賃貸で1〜2年住むこと。購入は生活導線と在留期間の見通しが固まってからで遅くありません。賃貸の初期費用は家賃の約3.5か月分で、家具付きが標準のため、家具の購入・処分の費用もかかりません。

次に、家賃・車・医療保険・教育費・帰国費用を合算した年間支出表を作り、収入(または資産の取り崩し)と突き合わせること。為替の前提も置いてください。リンギット建ての支出を円資産で賄う場合、円安が進めば実質的な生活費は上がります。

最後に、税務です。マレーシアでは暦年182日以上の滞在で税務上の居住者と判定されます。日本側の納税義務は日本の税法で別途判断されるため、出国前に日本の税理士に確認してください。ビザ制度上の滞在義務(MM2Hの年90日など)と税法上の日数判定は別の基準です。

  • まず賃貸で1〜2年。購入は生活導線が固まってから
  • 年間支出表(家賃・車・保険・教育・帰国費用)を作り、為替の前提を置く
  • 制度に依存する条件は契約直前に一次資料で再確認する
  • 購入するなら出口(誰が買うのか)を先に言語化する

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出典

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よくある質問

マレーシア移住が「悲惨」と言われるのはなぜですか?

主因は費用の見積もり違いです。外食や公共交通は安い一方、自動車(物品税60〜105%)、インターナショナルスクール(年RM12,000〜145,000)、民間医療保険は高額です。加えてガソリン補助は国民限定で外国人は市場価格を払います。日本との生活費の差の大半は住居費が生んでおり、他の項目での節約幅は限定的です。

日本人のマレーシア移住は増えていますか?

減っています。2025年10月1日現在の在留邦人数は19,690人で前年比1.7%減、2020年のピーク30,973人からは約36%減です。日本人コミュニティを前提にした生活設計や、日本人向け賃貸需要を当て込んだ投資は、この縮小を織り込む必要があります。

老後の移住先として現実的ですか?

医療水準は高い一方、外国人は公的医療保険の対象外で、2025年7月からは非市民の民間医療サービスに6%のサービス税がかかります。民間医療保険が事実上の前提となり、保険料は年齢とともに上がります。年金を円で受け取る場合は為替の影響も受けるため、保険料と為替を含めた長期の支出表で判断してください。

移住してから仕事を探せますか?

難しくなっています。就労ビザの給与基準は2026年6月からカテゴリーIIIでも月給RM5,000以上となり、在留期間にも上限が設けられました。ジェトロ調査では現地日系企業の黒字割合は62.5%とASEAN主要国で最低、事業拡大を検討する企業も44.0%と低下しています。仕事を決めてから渡航する順序をおすすめします。

移住のために物件を買うべきですか?

まず賃貸をおすすめします。2025年第3四半期のクアラルンプールの売れ残り完成在庫は3,643戸と全州最多、住宅価格指数は前年同期比4.3%下落しました。外国人が買えるのはRM100万以上の価格帯で、売却時の買い手は外国人か現地富裕層に限られます。購入は生活導線と在留期間の見通しが固まってからでも遅くありません。

制度はどれくらい変わりますか?

直近2年でも、MM2Hの階層改定、外国人の印紙税4%→8%、サービス税の課税範囲拡大(非市民の民間医療、年RM60,000超の学費)、最低賃金RM1,500→RM1,700、電気料金体系の改定が行われています。移住の判断に使った条件が渡航時点で変わっている可能性があるため、契約直前に一次資料で再確認してください。

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