マレーシア不動産 外国人 購入制限
マレーシア不動産の外国人購入制限|州別の最低購入価格と買えない物件の一覧
最終更新日:2026-10-08
執筆:Yuto Nishitani(ラブアン法人代表・クアラルンプール在住)
マレーシアは外国人が土地付きの所有権を取得できる数少ないアジアの国ですが、「誰でも何でも買える」わけではありません。外国人の取得は州政府の事前承認が法律上の条件で、承認の基準となる最低購入価格や買えない物件の区分は州ごとに異なります。さらに州によっては、所有できる戸数や転売までの年数にも制限があります。この記事では、国土法(National Land Code)の条文、マレーシア弁護士会(Bar Council)が2024年12月に会員向けに出した州別一覧(2024年10月時点)、ペナン州土地局のガイドライン(2024年8月更新)をもとに、購入前に確認すべき制限を整理します。
結論:外国人の購入制限は「州の承認・最低価格・対象外物件」の3層
国土法433B条は、マレーシア国民でない個人と外国法人が土地(区分所有の住戸を含む)を取得する場合、事前に書面で申請して州当局(State Authority)の承認を得なければならないと定めています。承認なしに行われた取引は433C条により無効です。永住権保有者も「国民でない者」に含まれるため、承認の手続きは必要です。
州が承認するかどうかの基準になるのが、連邦の指針と各州の方針です。連邦の指針(旧経済計画局、現経済省)は、1戸RM100万未満の物件、州が定める低価格・中低価格住宅、マレー保留地上の物件、ブミプトラ(マレー系など)向けに割り当てられた住戸を、外国人が取得できないものとしています。各州はこれを基準に、独自の最低購入価格や追加の制限を設けています。
つまり、外国人が買える物件かどうかは「州の承認が下りる物件か」で決まります。価格だけを見て契約を進めると、承認が下りずに取引が成立しない、または将来売れる相手が限られるといった問題が起きます。
- 国土法433B条:外国人の取得は州当局の事前承認が必要(永住者も対象)
- 433C条:承認のない取引は無効
- 連邦の指針:RM100万未満、低価格・中低価格住宅、マレー保留地、ブミプトラ割当住戸は取得不可
- 各州が独自の最低価格・戸数制限・転売制限を上乗せしている
州別の外国人最低購入価格(住宅)
下の表は、マレーシア弁護士会の通達(Circular No.444/2024、2024年10月時点の州別一覧)と、ペナン州土地局のガイドライン(2024年8月更新)をもとにまとめた住宅の基準額です。2026年10月時点で、これらを変更する州の発表は確認できていません。基準額は州の行政判断で改定されるため、契約前に必ず弁護士を通じて州土地局(PTG)の最新の基準を確認してください。
日本人が検討することの多いクアラルンプールはRM100万です。セランゴール州は半島部で最も高いRM200万(ゾーン1・2)で、個別の土地権利を持つ戸建ては外国人の個人名義で取得できず、区分所有の物件に限られます。ペナン州は島側と本土側(スブラン・プライ)で基準が分かれ、本土側のストラタ物件は個人ならRM50万からですが、外国法人はRM100万です。
ペナン州や連邦の一部では、2020年や2024年に在庫物件の販売促進策として期間限定で基準額を下げた例がありますが、いずれも期間が終了しています。ペナン州は2025年以降、通常の基準額に戻したと州政府が説明しています。
| 州・地域 | ストラタ(コンドミニアム等) | 戸建て等 | 主な追加条件 |
|---|---|---|---|
| クアラルンプール | RM100万 | RM100万 | ― |
| セランゴール ゾーン1・2 | RM200万 | RM200万(区分所有に限る) | 個別権利の戸建て・競売物件・農地は不可 |
| セランゴール ゾーン3 | RM100万 | RM100万(区分所有に限る) | ウル・セランゴール、サバ・ブルナム |
| ペナン島 | RM100万 | RM300万 | 承認料3%(一部1.5%)、3年間転売不可 |
| ペナン本土 | RM50万(外国法人はRM100万) | RM100万 | 承認料3%、3年間転売不可 |
| ジョホール | RM100万 | RM100万(国際ゾーンはRM200万とされる) | 平屋・1.5階建てテラスは不可 |
| マラッカ | RM50万 | RM100万 | 住宅2戸まで、登記から5年間は譲渡・賃貸不可 |
| ヌグリ・スンビラン | RM60万 | RM100万 | 慣習地(タナ・アダット)・農地は不可 |
| サバ | RM100万 | RM100万 | サバ州MM2H向けの高層住宅はRM60万からの枠がある |
| サラワク | 州の告示上、ストラタの基準額の扱いは要確認 | クチン管区RM60万、その他RM50万 | 先住民地域の土地は不可 |
外国人が買えない物件
州の最低価格を満たしていても、物件の区分によっては外国人は取得できません。連邦の指針で共通して対象外とされるのは、低価格・中低価格住宅、マレー保留地(Malay Reserve Land)上の物件、開発計画でブミプトラ向けに割り当てられた住戸(Bumiputera Lot)です。
州ごとの追加の制限もあります。弁護士会の一覧では、セランゴールは競売物件と農地、ヌグリ・スンビランは慣習地と農地、マラッカは歴史地区(ヘリテージ・ゾーン)の物件と平屋・1.5階建てのテラスハウス、ジョホールも平屋・1.5階建てのテラスハウスを対象外としています。ペナンは中価格住宅まで対象外で、競売物件も買えません。ペラ州は2023年9月以降、外国人がフリーホールド(所有権の期限がない土地)の物件を持てない扱いです。
商業物件、農地、工業用地を取得する場合は、連邦の指針上、マレーシアで設立した会社を通じて取得することが求められるのが一般的です。住宅とは前提が異なるため、法人での取得を検討する場合は別途確認が必要です。
- 低価格・中低価格住宅(ペナンは中価格住宅も対象外)
- マレー保留地上の物件
- ブミプトラ割当住戸(Bumiputera Lot)
- 競売物件(セランゴール、ペナン、マラッカなど)
- 平屋・1.5階建てのテラスハウス(ジョホール、マラッカ)
- ペラ州のフリーホールド物件(2023年9月以降)
見落としやすい制限:戸数・転売までの年数・承認料
最低価格以外にも、州によって所有後の制限があります。マラッカ州は外国人が所有できる住宅を2戸までとし、登記から5年間は譲渡や賃貸ができません(登記官のキャビアットが付されます)。ペナン州は売買契約日から3年間は転売できず、MM2H保有者向けのRM50万の基準で買う場合も2戸までに限られます。
承認を得る際の費用も州ごとに異なります。ペナン州土地局のガイドラインでは、外国人の承認料(Fi Kelulusan)は原則として物件価格の3%(島側のRM100万〜150万のストラタは1.5%)で、承認から30日以内に納付し、1年間納付しないと承認が失効します。これとは別に、申請手数料として住宅1件あたり個人RM10,000がかかります。ジョホール州は2025年に外国人の承認料(レビー)を2%から3%に引き上げたと報じられていますが、最低額や適用開始日は報道によって異なり、州の公式資料は確認できませんでした。
さらに、2026年1月1日以降に譲渡証書(MOT)を締結する外国人には、住宅の取得に一律8%の印紙税がかかります(改定前は4%)。州の承認料と国の印紙税は別の費用で、両方を初期費用に含めて計算する必要があります。
| 州 | 戸数制限 | 転売・賃貸の制限 | 承認料など |
|---|---|---|---|
| ペナン | MM2H基準での購入は2戸まで | 売買契約から3年間は転売不可 | 承認料3%(島側RM100万〜150万のストラタは1.5%)、申請手数料RM10,000 |
| マラッカ | 住宅2戸まで | 登記から5年間は譲渡・賃貸不可 | 要確認 |
| ジョホール | ― | RM100万未満の特例承認物件は国民にしか転売できないとの報道 | 2025年に2%→3%へ引き上げとの報道(詳細は報道により異なる) |
| 全国(国の税) | ― | ― | MOTの印紙税:外国人の住宅は一律8%(2026年1月以降) |
MM2Hを取っても州の最低価格は下がらない(例外あり)
長期滞在ビザのMM2Hには階層ごとの物件購入義務がありますが、これは州の外国人最低購入価格とは別の規制です。原則として両方が適用され、高いほうが実際の下限になります。クアラルンプールでシルバー階層(物件RM60万以上)の人が買う場合も、州の基準額RM100万を満たす必要があります。
例外は、州がMM2H保有者向けに別の基準を設けている場合です。ペナン州はMM2H保有者にRM50万の基準(2戸まで)を設けており、サバ州は州のMM2H向けにRM60万からの高層住宅の枠を案内しています。こうした特例は州と制度の組み合わせで決まるため、個別に確認してください。
承認にかかる期間と、契約で確認すべきこと
州の承認は、売買契約(SPA)の締結後に弁護士が申請するのが一般的です。承認期間の公式な目安は確認できませんでしたが、現地の法律事務所は、承認手続きによって取引完了までの期間が1〜2か月以上延びると説明しています。州や時期によってはそれ以上かかることもあります。
承認が下りない場合の扱い(契約解除と返金の条件)は、SPAに明記しておく必要があります。また、委任状(Power of Attorney)にもとづいて外国人が署名した証書は無効とする規定(433F条)があるため、本人の署名が必要な書類の段取りも弁護士と確認してください。
最低価格や対象外物件の制限は、売るときにも効いてきます。買主が外国人なら同じ州の基準を満たす必要があるため、基準額ぎりぎりの物件は売却先が国民に限られやすくなります。購入時に出口の買い手層まで想定しておくことが、制限の多い市場での基本です。
- SPAに「承認が下りない場合の解除・返金条件」を入れる
- 承認料・申請手数料を初期費用に含める
- 委任状による署名は無効になる場合がある(433F条)
- 売却時の買い手が外国人なら、同じ最低価格の制限を受ける
出典
- Malaysian Bar「Circular No 444/2024」(外国人の不動産取得:国土法の条文と州別一覧、2024年10月時点)
- Pejabat Tanah dan Galian Pulau Pinang「Perolehan Tanah oleh Warganegara Asing」(2024年8月1日更新)
- Utusan Malaysia「Pulau Pinang nafi jual hartanah kepada warga asing pada harga rendah」(2026年5月)
- KePKAS Sabah「3,000 high-rise units available for Sabah MM2H」
- SK Ling & Tan「Foreign acquisition of land in Sarawak」
- HHQ「Johor property boom: the new property legal & tax framework for foreign acquisitions」(2025年10月)
- New Straits Times「Foreigners hit Johor property resale wall」(2026年4月)
- EdgeProp.my「Minimum property purchase prices for foreign buyers」(2017年1月)
- DNH「Cash flow timing for sub-sale property purchase in Malaysia」
- LHDN「Garis Panduan Pengenaan Duti Setem Jadual Pertama Akta Setem 1949」(外国人の住宅MOT 8%)
この記事の著者
Yuto Nishitani ラブアン法人代表
ラブアン法人代表として、2025年10月からマレーシア・クアラルンプールに単身で暮らしています。
現在はクアラルンプールのブキッ・ビンタンで物件を賃貸して暮らしています。
マレーシア不動産の購入・投資に関する記事は、政府・当局の公表資料などの一次資料に基づいて整理したもので、物件を購入した経験に基づくものではありません。
マレーシア不動産の購入前に、条件を整理しませんか?
予算、購入目的、希望エリア、移住予定の有無によって、見るべき物件や確認すべきリスクは変わります。まずは無料相談で、あなたの条件に合う選択肢を整理できます。
よくある質問
マレーシアで外国人は不動産を買えますか?
買えますが、国土法433B条により州当局の事前承認が必要です。承認の基準として州ごとの最低購入価格があり、低価格・中低価格住宅、マレー保留地、ブミプトラ割当住戸などは取得できません。
クアラルンプールの外国人最低購入価格はいくらですか?
RM100万です(マレーシア弁護士会 Circular 444/2024、2024年10月時点)。セランゴール州のゾーン1・2はRM200万、ペナン本土のストラタは個人ならRM50万と、州によって大きく異なります。
外国人が買えない物件はどれですか?
低価格・中低価格住宅、マレー保留地上の物件、ブミプトラ割当住戸は全国共通で対象外です。州によって、競売物件、農地、平屋・1.5階建てのテラスハウス、歴史地区の物件なども対象外とされています。
外国人が所有できる戸数に制限はありますか?
全国一律の戸数制限は確認できませんでしたが、マラッカ州は住宅2戸まで、ペナン州はMM2H保有者向けの基準で買う場合に2戸までと定めています。
購入後すぐに転売できますか?
州によって制限があります。ペナン州は売買契約から3年間、マラッカ州は登記から5年間(賃貸も含む)は譲渡できません。売却時は外国人のRPGT(5年以内30%)もかかります。
永住権を持っていても州の承認は必要ですか?
必要です。国土法は国民でない者を対象にしているため、永住権保有者も承認の手続きが必要です。ただしペナン州は永住者の基準額をRM25万とするなど、外国人より緩い基準を設けている州があります。
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