マレーシア不動産 ローン 日本人
マレーシア不動産のローンは日本人でも組める?現地銀行と日本の海外不動産ローンを比較
最終更新日:2026-10-08
執筆:Yuto Nishitani(ラブアン法人代表・クアラルンプール在住)
「マレーシアの物件は現地でローンを組めるのか」は、購入相談で最も多い質問のひとつです。結論からいえば、制度上は組めます。マレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia、BNM)の外為規制は、非居住者がマレーシア国内の不動産購入のためにリンギットを借りることを認めています。ただし、外国人にいくら貸すか(融資割合)は各銀行の与信判断で、公式に開示されている数値はごく一部です。この記事では、公的に確認できるルールと銀行ごとに確認しなければならない部分を分けて整理し、日本の金融機関を使う選択肢と比較します(2026年10月時点)。
結論:制度上は借りられるが、条件は銀行ごとの審査で決まる
BNMの外為政策(Foreign Exchange Policy)では、非居住者は国内の実体経済活動の資金として、金額の制限なくリンギット建ての借入れができるとされています。BNMの非居住者向けFAQでは、この実体経済活動に不動産の購入が含まれる(土地のみの購入を除く)と説明されています。外国人であることを理由に、BNMが一律の融資割合(LTV)の上限を設けているわけではありません。
一方で、実際の融資判断は各銀行が行います。外国人の非居住者には現地居住者より低い融資割合を設定する銀行が多いと紹介されていますが、銀行が公式ページで外国人向けの融資割合を明示している例は多くありません。ウェブ上に出回る「外国人は50〜70%」といった数値は比較サイトやブログの集計で、銀行の公表値ではない点に注意してください。
現実的な選択肢は、①マレーシアの銀行で非居住者として住宅ローンを申し込む、②MM2Hなど長期滞在資格を前提にした商品を使う、③日本の金融機関の海外不動産向けローン(日本の不動産を担保にするもの)を使う、④現金で買う、の4つです。
| 方法 | 公表されている条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現地銀行の住宅ローン(非居住者) | 外国人向けの融資割合を公表している銀行は少ない | 収入証明・在留状況で個別審査。リンギット建て |
| MM2H向けローン(例:CIMB) | 最大85%、最長35年または70歳まで | MM2H資格など商品ごとの申込資格がある |
| 日本の海外不動産ローン(例:東京スター銀行) | 日本国内の不動産担保、期間1〜30年 | 担保となる日本の不動産が必要。事務手数料2.2〜3.3% |
| 現金購入 | ― | 送金時の為替で円換算の総額が変わる |
公的なルール①:政策金利2.75%と、金利の決まり方(SBR)
BNMの政策金利(OPR)は2.75%です。2025年7月の会合で3.00%から引き下げられ、2026年9月3日の金融政策委員会(MPC)でも据え置かれました。2026年の次回会合は11月5日の予定です。
マレーシアの変動金利型の住宅ローンは、2022年8月1日に導入された標準基準金利(Standardised Base Rate、SBR)に銀行ごとのスプレッドを上乗せして金利が決まります。SBRはOPRのみに連動する仕組みで、主要行は2025年7月以降のSBRを2.75%と公表しています。実際の適用金利は「SBR+スプレッド」で、スプレッドは借り手の属性や物件によって変わります。
リンギット建てで借りる場合、返済もリンギットです。家賃収入もリンギットで入るため通貨は揃いますが、日本の円資金で返済する場合は、毎月の返済額が為替で変動します。
- OPR:2.75%(2026年9月3日のMPCで据え置き)
- 変動金利の基準:SBR(2022年8月導入、OPRに連動)
- 適用金利 = SBR + 銀行ごとのスプレッド
公的なルール②:3件目以降はLTV70%、期間は最長35年
BNMは2010年11月、借り手にとって3件目以降の住宅ローンについて、融資割合(LTV)の上限を70%とする措置を導入しました。1件目・2件目は各銀行の与信方針に委ねられています。マレーシアですでに2件の住宅ローンを抱えている人が3件目を買う場合は、物件価格の30%以上を自己資金で用意する必要があります。
融資期間は、2013年7月のBNMの措置で、住宅・非住宅の不動産向け融資について最長35年とされました。「70歳まで」という年齢の上限はBNMの規制ではなく、銀行が商品ごとに定めているものです(CIMBのMM2H向け商品では「35年または70歳のいずれか早いほう」)。
年齢の上限がある商品では、申込時の年齢が高いほど融資期間が短くなり、月々の返済額が大きくなります。たとえば55歳で申し込むと、70歳上限の商品では期間が15年程度に縮むため、返済比率の審査で不利になりやすい点を考慮してください。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 3件目以降の住宅ローン | LTV上限70% | BNM 2010年11月3日発表 |
| 融資期間 | 最長35年 | BNM 2013年7月5日発表 |
| 非居住者のリンギット借入れ | 国内の実体経済活動(不動産購入を含む、土地のみは除く)なら金額制限なし | BNM外為政策・非居住者FAQ |
| 外国人向けのLTV上限 | BNMとしての一律の定めはない(銀行の与信判断) | ― |
現地銀行で外国人が借りるときの審査ポイント
外国人向けの融資割合を公式に示している例として確認できたのは、CIMBのMM2H向け住宅ローン(Malaysia My Second Home-i)です。MM2Hの資格保有者(CIMBでの定期預金が条件)などを対象に、最大85%(保険料・弁護士費用・評価費用を含められる)、期間は最長35年または70歳までとされています。対象物件の最低価格はMM2Hの階層に合わせ、シルバーRM60万、ゴールドRM100万、プラチナRM200万です。
HSBCマレーシアのキャンペーン規約では、18歳以上の非マレーシア人も申込可能で融資額はRM300万までとされていますが、外国人に対する融資割合は明示されていません。その他の主要行(Maybank、UOB、OCBC、スタンダードチャータードなど)については、非居住者の融資割合を示す公式ページは確認できませんでした。
審査で求められる書類は、パスポート、売買契約書(SPA)、直近3か月の給与明細と銀行取引明細などが一般的です。日本の収入で審査を受ける場合は、英文の所得証明や翻訳を求められることがあります。複数の銀行で事前審査を受け、融資割合・スプレッド・期間・繰上返済の条件を並べて比較してください。
- MM2H資格の有無で選べる商品が変わる
- 外国人向けの融資割合は銀行に直接確認する(ネット上の数値は非公式)
- 年齢と融資期間(70歳上限の有無)を確認する
- 英文の収入証明を準備する
- 銀行の物件価格条件とは別に、州の外国人最低購入価格を満たす必要がある
日本の金融機関を使う:海外不動産ローンの条件
日本の金融機関でマレーシアの物件購入に使えることを公式に明示している商品として、東京スター銀行の「全世界型 海外不動産ローン(スター不動産担保ローン)」があります。対象国の一覧にマレーシアが含まれており、日本国内の不動産を担保にして借りる仕組みです。
同行の商品概要(2026年6月時点)では、日本国籍または永住権を持つ日本在住者で、年収200万円以上、申込時20〜69歳・完済時84歳以下が条件です。借入額は100万円以上(上限は収入と担保評価で決まる)、期間は1〜30年、事務手数料は借入額の2.2〜3.3%とされています。購入価格と諸費用の全額を対象にでき、事業性の資金には使えません。
この方法は、マレーシアの銀行審査を受けずに円建てで借りられる一方、日本国内に担保となる不動産が必要です。円で借りてリンギットの家賃で返す形になるため、現地ローンとは逆向きの為替リスクを負う点も考慮してください。
ローンを使うときに増える費用
マレーシアの住宅ローン契約書には印紙税がかかります。印紙法(Stamp Act 1949)第1附則27項により、リンギット建ての融資契約は融資額RM1,000ごとにRM5、つまり融資額の0.5%です。RM70万を借りるならRM3,500になります。
このほかに、ローン契約書の作成にかかる弁護士費用、銀行が求める物件評価費用、住宅ローン用の保険(MRTA・MRTT)の保険料がかかります。CIMBのMM2H向け商品のように、これらを融資額に含められる商品もあります。
外国人が住宅を取得する際の譲渡証書(MOT)の印紙税は、2026年1月1日以降は一律8%です(第1附則32項(ab))。頭金と合わせて自己資金で用意する前提で資金計画を立ててください。
| 項目 | 税率・計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ローン契約書の印紙税 | 融資額の0.5% | RM3,500 |
| MOTの印紙税(外国人・住宅) | 物件価格の8% | RM80,000 |
| 弁護士費用・評価費用・保険料 | 規程・銀行・保険会社ごとに異なる | 個別見積もり |
ローンを組む前に確認したいこと
ローンは自己資金利回りを押し上げる手段であると同時に、空室と為替のリスクを大きくします。家賃水準と管理費、評価税、ローン返済額を並べ、空室が数か月続いても返済できるかを先に試算してください。
売却時にはローン残債を清算(Redemption)してから所有権を移すため、早期返済の違約金がかかるロックイン期間の有無も確認が必要です。外国人の売却益税(RPGT)は所有5年以内の売却で30%と重いため、ローン条件と出口の時期はセットで考えてください。
- 空室・金利上昇・為替変動を織り込んで返済計画を試算する
- ロックイン期間と繰上返済の違約金を確認する
- 売却時のRPGT(外国人は5年以内30%)と残債清算の手順を確認する
- 日本で確定申告する場合、借入金の利子は必要経費になる(元本返済は経費にならない)
出典
- Bank Negara Malaysia「Monetary Policy Statement」(2026年9月3日)
- Bank Negara Malaysia「MPC meetings 2026」
- Bank Negara Malaysia「Measures in promoting a stable and sustainable property market…」(2010年11月、LTV70%)
- Bank Negara Malaysia「Measures to further promote a sound and sustainable household sector」(2013年7月、最長35年)
- Bank Negara Malaysia「Revised reference rate framework」(SBR)
- Bank Negara Malaysia「Foreign Exchange Policy: Non-resident — Borrowing in Malaysia」
- Bank Negara Malaysia「FAQs on Foreign Exchange Policy — Non-residents」(2019年)
- CIMB Preferred「Malaysia My Second Home-i Financing」
- 東京スター銀行「全世界型 海外不動産ローン」
- LHDN「Garis Panduan Pengenaan Duti Setem Jadual Pertama Akta Setem 1949」
この記事の著者
Yuto Nishitani ラブアン法人代表
ラブアン法人代表として、2025年10月からマレーシア・クアラルンプールに単身で暮らしています。
現在はクアラルンプールのブキッ・ビンタンで物件を賃貸して暮らしています。
マレーシア不動産の購入・投資に関する記事は、政府・当局の公表資料などの一次資料に基づいて整理したもので、物件を購入した経験に基づくものではありません。
マレーシア不動産の購入前に、条件を整理しませんか?
予算、購入目的、希望エリア、移住予定の有無によって、見るべき物件や確認すべきリスクは変わります。まずは無料相談で、あなたの条件に合う選択肢を整理できます。
よくある質問
日本人でもマレーシアの銀行で住宅ローンを組めますか?
制度上は可能です。BNMの外為政策は、非居住者がマレーシア国内の不動産購入のためにリンギットを借りることを認めています(土地のみの購入は除く)。ただし融資の可否と融資割合は銀行ごとの審査で決まります。
外国人は物件価格の何%まで借りられますか?
BNMとしての外国人向けの一律の上限はなく、銀行の与信判断です。公式に確認できた例では、CIMBのMM2H向け商品が最大85%です。ネット上の「50〜70%」は比較サイト等の集計で、銀行の公表値ではありません。なお借り手にとって3件目以降の住宅ローンはLTV70%が上限です。
マレーシアの住宅ローン金利はどう決まりますか?
変動金利は標準基準金利(SBR)に銀行のスプレッドを上乗せして決まります。SBRは政策金利(OPR)に連動し、OPRは2026年9月3日のMPCで2.75%に据え置かれています。
日本の銀行でマレーシアの物件を買うローンはありますか?
東京スター銀行の「全世界型 海外不動産ローン」は対象国にマレーシアを含みます。日本国内の不動産を担保にする商品で、期間は1〜30年、事務手数料は借入額の2.2〜3.3%です(2026年6月時点の商品概要)。
ローンを使うと印紙税はいくらかかりますか?
リンギット建てのローン契約書には融資額の0.5%の印紙税がかかります。これとは別に、外国人の住宅取得のMOTには2026年1月以降一律8%の印紙税がかかります。
何歳までローンを組めますか?
BNMの規制は融資期間の上限(最長35年)で、年齢の上限は銀行が商品ごとに定めます。CIMBのMM2H向け商品は「35年または70歳のいずれか早いほう」です。
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